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著者 ロン・ジマーマン / ジム・ブックホルツ / ブレンダ・ラッキー / マイケル・グロス

 

訳者 山本 風音  /  監訳者 山本 幹彦

2023年8月 / ラーニングアウトドア刊 / 352頁 / 定価 3,080円(税込)

人がどこかを訪れたり、何かのプログラムに参加するとき、

その人は単なる知識や情報ではなく、自分にとっての本質的な“何らかの意味”を求めている。

 自然や文化がそのものが私たちに語りかける固有のメッセージを読み解き、人々に通訳して伝える専門職、「インタープリター」。

イエローストーンやヨセミテをはじめとするアメリカの国立公園を中心に発展してきたガイドの役割は、“人々を迎え案内する” コミュニケーションの手法として、​自然ガイドや自然体験プログラム、観光ガイド、博物館や美術館、図書館、動物園や水族館、大学や教育機関など、さまざまな場面で取り入れられています。

 本書は、狩猟採集社会から続く人類のガイドの歴史を振り返り、インタープリテーションの役割や考え方、心構えを踏まえながら、実際のプログラムの組み立て方や、ビジターを前にした実践での伝え方やトークのテクニックなどが網羅されています。

 自然や場所(地域)、資源(動植物や展示品など)に対して、訪れた人々が自分なりの「つながり」を感じたり、「何らかの意味」を読み解くためには、インタープリターはどのように人々を触発し、メッセージをどのように伝えればいいのでしょうか。「インタープリターズ・ガイドブック」は、インタープリテーションの入門書として、人を迎えたり、人に伝えることを仕事とするすべての人にとって、実践に役立つ一冊です。

 本書『インタープリターズ・ガイドブック』は、1994年に出版された『インタープリテーション入門──自然解説技術ハンドブック』(日本環境教育フォーラム監訳、小学館)の改訂版です。94年版の原著はアメリカで出版された『The Interpreter’s Guidebook (Third Edition, 1994)』ですが、その後2015年に内容が大幅に加筆・修正された第4版Fourth Edition, 2015が本国で出版されたのを受けて、新たに翻訳・編集を行い、日本語版の新しいタイトルで出版することになりました。

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本書の内容

● インタープリテーションのルーツ

 太古の狩猟採集社会は、人々に進むべき道を示すガイドという存在に頼って暮らしていました。ガイドは、ある場所へと人々を案内するのと同時に、精神的に人々を導くことの役割を担っていました。ここでは、インタープリテーションのルーツであるガイドの起源をたどり、近代の自然保護運動や国立公園制定の動きを経て、インタープリテーションがどのように専門職として発展していったのかを探ります。

● 意味を中心としたインタープリテーションとは何か?

 インタープリテーションとはどのような活動や考え方を指すのでしょうか? ここでは、「意味」を中心としてインタープリテーションを捉え、活動を構成する3つの要素の相互作用を検討します。つまり、ビジター、対象の資源、インタープリターという要素が互いに関わることでインタープリテーションが生じるのであり、インタープリターがそこでのコミュニケーションを促します。また、フリーマン・チルデンが定めた「インタープリテーションの6つの原則」を、具体的な活動例を交えて詳しく紐解きます。

● 「テーマ」を元に実際のプログラムを組み立てる

 実際のプログラムを作る上で重要な要素が「テーマ」です。参加者に対してただ漠然と知識や情報を伝えるのではなく、プログラム全体を貫く何らかのテーマを設定することで、プログラムをまとめ、より印象的で記憶に残るものになります。そのような優れたテーマを設定するための具体的なステップを紹介し、「テーマプランニング・ワークシート」を使ってプログラムを組み立てる方法を紹介しています。ワークシートはホームページからダウンロードできます。

● コミュニケーションのポイントと、さまざまな発表のテクニック

 コミュニケーションは、さまざまな情報やメッセージを互いに交換する作業です。言葉による会話だけでなく、非言語のコミュニケーションとして顔の表情、アイコンタクト、声(発声)、姿勢、外見などといったあらゆる要素がさまざまな意味を相手に伝えています。ここでは、ビジターとのコミュニケーションを進める上で意識するポイントを紹介します。また、小道具を使う、ユーモアを交える、実演する、コスチューム(衣装)を着飾る、ストーリーテリングなど、さまざまな発表のテクニックを紹介します。

● さまざまな状況に合わせたインタープリテーション

 フィールドを移動しながら解説を行う「ガイドウォーク/ガイドツアー」、移動を伴わない「トーク」やスライドを使った「プレゼンテーション」、プログラムとして事前に設定されていない「自発的な場面でのインタープリテーション」、「子どもを対象にしたインタープリテーション」など、さまざまな状況におけるインタープリテーションのポイントと発表のヒントを各章に分けて紹介しています。

 

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本書の特徴

● たくさんの写真や図

● 実践に役立つティップス(ヒント)集

● 実践例やケーススタディ

● さまざまな発表方法の動画リンク(QRコード付き)

​● ダウンロードして使えるワークシート

目次

日本語版への序文  ii

序文と謝辞  iv

訳者まえがき  vi

第1章   インタープリテーションのルーツ

 ガイドの起源  4

 自然学習運動  10

 自然保護運動  13

 国立公園初期のインタープリテーション  15

 アメリカの初期の文化的インタープリテーション  26

 専門職としてのインタープリテーションの発展  30

 インタープリテーションの開花  33

第2章   意味を中心としたインタープリテーション

 インタープリテーションとは何か?  42

 意味を中心としたモデル  44

 インタープリテーションの原則  54

 インタープリテーションの目的  62

 教育活動との違い  64

 優れたインタープリターに必要な素質とは  67

第3章   テーマに沿ったプログラムを計画する

 インタープリテーションの3つの柱  72

 効果的なプログラムを計画する  82

第4章   コミュニケーションを成功させる鍵

 ビジターとのコミュニケーション  108

 非言語コミュニケーション  111

 メッセージ  120

 マルチ知能  125

 信頼性を高める  127

 干渉要因を克服する  128

 注意が散漫なビジター、場をかき乱すビジター  130

第5章   クリエイティブな伝え方のテクニック

 小道具/視覚教材  136

 ユーモア  139

 質問のテクニック  142

 ストーリーテリング  146

 イメージ誘導  149

 実演  152

 コスチューム  155

 生き物のプログラム  160

 音楽、動作、音  165

 

 

 

 

第6章   インタープリテーションのトーク

 インタープリテーションのトークの基本  172

 トークの構成を組み立てる  175

 トークでの発表のテクニック  185

 すべての要素を組み合わせる  196

 スライドトーク/マルチメディア・プレゼンテーション  202

第7章   ガイドウォーク&ガイドツアー

 ガイドウォーク/ガイドツアーとは  228

 ガイドウォーク/ガイドツアーを計画する  235

 ガイドウォーク/ガイドツアーの構成  237

 ガイドウォーク/ガイドツアーの発表のテクニック  244

 すべての要素を組み合わせる  256

 

第8章   自発的なインタープリテーション

 自発的なインタープリテーションとは  266

 インフォメーション・デスク/窓口  274

 

第9章   子どもを対象にしたインタープリテーション

 インタープリターのための子どもの発達理論  280

 学校や青少年団体との連携  290

 人形を使ったインタープリテーション  295

 年代の異なるグループ  297

 

第10章   フィードバックを集める

 評価の基本  302

 段階的な評価を行う  304

 

 

著者紹介  322

インタープリターズ・ハンドブック・シリーズ  324

監訳者あとがき  327

参考文献  330

画像出典  334

著者紹介

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(左から)ロン、ジム、ブレンダ、マイク

ロンジマーマン   Ron Zimmerman

 ウィスコンシン大学スティーブンス・ポイント校にある自然のフィールド「シュミークル保護区」の代表であり、そこで自然資源学部(College of Natural Resources)におけるインタープリテーショ・プログラムの開発に取り組む。インタープリターズ・ハンドブック・シリーズを手掛けた初代メンバーであり、コンサルタント・チーム「シュミークル・リザーブ・インタープリターズ」の創設メンバー。子どもの頃にネブラスカの草原で過ごした経験が、自身の原体験となった。

 

ジム・ブックホルツ   Jim Buchholz

 シュミークル保護区副代表。ウィスコンシン大学スティーブンス・ポイント校インタープリテーション講師。コンサルタント・チーム「シュミークル・リザーブ・インタープリターズ」のメンバーで、専門はメディア・デザイン。自らの自然史に対する熱意は、ウィスコンシン州立公園で過ごした幼少期の体験を通して育まれた。

ブレンダ・K・ラッキー   Brenda K. Lackey

 ウィスコンシン大学スティーブンス・ポイント校インタープリテーション准教授。学術誌『ジャーナル・オブ・インタープリテーション・リサーチ』の編集委員であり、全米インタープリテーション協会の役員を務める。以前はインタープリティブ・パークレンジャーとして8年間勤務し、アメリカ陸軍工兵司令部と共にミシシッピ川上流部で活動を行った。

 

マイケル・グロス   Michael Gross

 ウィスコンシン大学スティーブンス・ポイント校、自然資源学部名誉教授であり、同学部におけるインタープリテーション教育プログラムの共同創設者。また、インタープリターズ・ハンドブック・シリーズを立ち上げ、コンサルタント・チーム「シュミークル・リザーブ・インタープリターズ」のメンバーも務める。アイオワ州の農場で過ごした子ども時代の経験を通して、自然に対する情熱を育んだ。

訳者まえがき (本文より抜粋)

 本書『インタープリターズ・ガイドブック』は、1994年に出版された『インタープリテーション入門──自然解説技術ハンドブック』(日本環境教育フォーラム監訳、小学館)の改訂版です。94年版の原著はアメリカで出版された『The Interpreter’s Guidebook (Third Edition, 1994)』ですが、その後2015年に内容が大幅に加筆・修正された第4版(Fourth Edition, 2015)が本国で出版されたのを受けて、新たに翻訳・編集を行い、日本語版の新しいタイトルで出版することになりました。

 

 94年版の『インタープリテーション入門』と比較すると、改訂版の本書ではページ数が100ページ以上増え、内容がより詳細に書き加えられ、著者たちのおよそ20年間にわたるインタープリテーションの実践が盛り込まれたものになっています。例えば、第1章「インタープリテーションのルーツ」で取り上げられている、人々を導くガイドとしてのインタープリテーションの発展の歴史や、第2章の「意味を中心としたインタープリテーション」といったアイデアは、新しく書き加えられた内容です。他にも、随所に新たなアイデアや最新の状況に合わせた記述が加えられており、前回の日本語版に慣れ親しんでいる方も、新たな視点でこの本を手に取っていただけるのではないでしょうか。

 

 本書を初めて手に取る方にとっては、「インタープリテーション」という言葉は馴染みがないかもしれません。本来の意味としては「通訳」を指し、インタビューなどの通訳者は「インタープリター」と呼ばれます。同時に、「インタープリット(interpret)」という語句には「読み解く、解釈する」という意味も含まれています。 しかし、本書で取り上げているのは「ヘリテージ・インタープリテーション」、つまり自然や文化の遺産(ヘリテージ)を読み解き、人々に伝えるという専門的な役割についてです。自然や文化が語りかけるメッセージの通訳者として、人々にわかりやすく伝えるというガイドの手法や考え方は、アメリカの国立公園を中心に発展してきました。国立公園という形で私たちの遺産を保護し、自然や文化の景観を後世に残そうとする取り組みの中で、そうした資源が持つ本質的な価値を人々に伝えることの役割を、インタープリターという専門職が担ってきたのです。

 

 しかし、インタープリテーションとは単に、自然や文化に関する知識や情報をわかりやすく伝えるだけでも、それによってビジターを楽しませることだけでもありません。人々は、何らかの「意味」を求めてその場所を訪れるのであり、そうした意味の探求を促すことがインタープリテーションの目的だとしています。本書では、意味を中心としてインタープリテーションを捉え(第2章)、何らかのテーマに沿ってプログラムを作り上げていくための段階的なステップが紹介されています(第3章)。また、ビジターとの具体的なコミュニケーションの方法や(第4章)、メッセージを効果的に伝えるための実践のテクニックが数多く盛り込まれています(第5章)。さらに、聴衆を相手にしたトークやプレゼンテーション(第6章)、フィールドを移動して案内するガイドウォークやガイドツアー(第7章)、プログラム以外の自発的な状況でのビジターとの関わり(第8章)など、インタープリテーションのさまざまな場面におけるアプローチや実践例を取り上げています。

 

 本書で扱うインタープリテーションの考え方は、国立公園やネイチャーセンターなどで行われている自然解説プログラムだけに当てはまるものではありません。他にも、博物館や美術館、動物園や水族館、または観光や地域づくりの分野で活動する方々にとっても、参考になるアイデアだと考えています。単に伝えたい情報やその場所の魅力を一方的に伝えるのではなく、訪れた人々がさまざまな資源を自ら体験し、そこから自分なりの意味を見出せるようにするためには、どのような働きかけが必要なのか。人を迎えるすべての人にとって、ガイドの実践に役立つさまざまなアイデアやテクニックが、この本には詰まっています。

 

 さて、ページをめくり、インタープリテーションの旅へと出かけましょう。この大いなる旅は、インタープリテーションのルーツであるガイドの起源、つまり私たちの遠い祖先の物語から始まります。

 

山本 風音  

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