2018年6月にスウェーデンの野外教育アクティビティを紹介した「遊びながら野外で学ぼう・野外で算数」を出版し、2017年から続けてきた全国でのワークショップ開催も、今年で3年目を迎えました。今年はスウェーデンからの著者を呼ぶことはできませんでしたが、昨年に引き続き自分たちで全国各地をまわりながら、幼稚園や学校の先生、野外教育リーダーやインタープリター、子どもたちや親御さんたちに向けて、子どもの意欲や主体性を重視した「遊びながら野外で学ぶ」スウェーデンの活動を紹介しました。
野外で算数ワークショップ2019:全国23ヶ所・参加者のべ600人以上
各地の幼稚園や学校、自主保育や森のようちえんなどの実際の教育現場で、「野外で算数」の活動を紹介しました。ときには先生方や親御さんたちも一緒になって、自然の素材を使いながら「大きいもの小さいものはどれ?」「同じ仲間を見つけよう!」と、子どもたち自身が楽しみながら算数を学んでいきます。野外の環境や素材を活用して、学びのモードを少し変えることで、子どもたちが生き生きと活発に学んでいく様子に、野外の学びを実際の授業や公教育の現場に取り入れていく可能性を感じました。岐阜県の森林文化アカデミーでは、県教育委員会主催の教員研修として野外で算数のワークショップを実施し、幼稚園から小中学校、高校まで多くの先生方が参加しました。
幼稚園、学校、森のようちえん
▲ 県の職員研修(岐阜県)
【京都市】コドモのイエ幼稚園 /【札幌市】認定子ども園せいめいのもり(教員研修)、森学舎 /【北海道鷹栖町】森のようちえん・ ぴっぱら /【千葉県佐倉市】佐倉さとやま学園 /【千葉県市原市】フクマスベース、杏保育園、ときわ保育園 /【岐阜県美濃市】県教委主催教員研修 /【佐賀県小川島】唐津市立小川小学校(地球のしごと大学)
今年も全国各地の野外教育施設や地域の教育ネットワークなどのグループにお呼びいただき、数多くのワークショップを開催しました。昨年に引き続き札幌や岐阜、長崎で実施した他、今年は新たに島根や岡山、神戸などで開催することができました。
ワークショップ
▲ 野外教育国際シンポジウム(韓国)
【札幌市】滝野自然学園 / 【神戸市】風キャビン農園 / 【韓国世宗市】野外教育シンポジウム / 【ニセコ町】ニセコ遊育の会 / 【京都市】宇多野ユースホステル / 【北海道上川町】大雪山大学 / 【長崎県諫早市】国立諫早青少年自然の家・イングリッシュキャンプ、諫早市こどもの城(職員研修) / 【岐阜県美濃市】森林文化アカデミー / 【島根県奥出雲町】奥出雲教育ネットワーク / 【岡山県倉敷市】自然体験活動支援センター
▲ イングリッシュキャンプ(長崎県)
6月にはスウェーデンの著者と共に韓国に招かれ、野外教育国際シンポジウムにて100人を超える参加者に向けて「野外で算数」の活動を紹介しました。開催地となった世宗(セジョン)市は韓国の行政庁が集まる新興都市で、官営の森のようちえんが開設されるなど野外教育への関心が高まっています。「野外で算数」の韓国語版も出版されることになり、アジア圏での国を超えた交流が続いていくのではないかと期待を寄せています。
長崎県諫早市では、10月に諫早青少年自然の家主催による小学生の「イングリッシュキャンプ」を開催し、その中で「野外で英語」の活動を行いました。市内の小学校で勤務する海外からのALTの先生に協力してもらいながら、自然の素材を使って英語に触れていきます。実物の素材と英語の単語が直接結びつき、ALTの先生とコミュニケーションを取る中で次第に英語の感覚が身について、自分から英語を使う状況が生まれていきました。英語の授業の中で「教室を飛び出して野外で学ぶ」ことの可能性を感じました。
今年も全国各地にお寄せいただき、合わせて12の都道府県で合計23回のワークショップや研修を実施し、のべ600人を超える方々にお会いすることができました。各地のフィールドで、問題意識を持って熱心に活動する教育者や野外教育リーダー、どのように我が子を育てるか頭を悩ませる多くの親御さんに出会いました。教育に求められる内容の変化や多様化が取りざたされる中で、フリースクールや自主保育、新しい学校を作る動きなど、オルタナティブな学びの環境づくりが進んでいます。そのような、各地の教育現場で試行錯誤されている方たちとネットワークを築きながら、それと同時に、学校や幼稚園・保育園の先生方とも一緒になって、子どもたちに一人ひとりに合った学びのあり方をデザインしていくお手伝いができればと思います。各地で蒔いた「遊びながら野外で学ぶ」活動の種が、子どもたちの成長と共にすくすくと花開いていくことを願って。
2020年1月 / 文とデザイン:山本 風音