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アンカー 1

今こそ、野外。​

コロナの時代に「もっと」子どもたちに健やかな遊びと学びを

 新型コロナウイルスが世界中に拡大し、わたしたちの生活に先の見えない不安と多くの影響を及ぼしてから、早いもので1年が経とうとしています。「ウィズコロナ」という言葉が表しているように、今までの価値観が根本から覆され、これまで自由に続けてきた社会や経済、人との関わりや自然とのつながり、またはわたしたちの暮らしそのものを、もう一度見直して考えることを余儀なくされました。休むことなく続けてきたあらゆる物事から一旦立ち止まり、今いる立ち位置をさまざまな視点でふりかえるべきタイミングなのかもしれません。そうであるなら、以前と比べて何ができなくなったのかより、リスクと向き合いながらも、それでも必要なことや大切なものに目を向けたい。
 「今こそ、野外ーーー。」自然の豊かさや、わたしたちが自然から感じる安らぎや心地よさ、身近な自然に触れることの大切さを、今ほど大きな意味を持って感じられるときはないでしょう。感染のリスクが付きまとう以前よりも窮屈な暮らしの中で、気分転換として人の少ない野外のフィールドに出かけたり、日常の緑に目を向けるようになった人は少なくないと思います。今までと同じ生活スタイルで、周りの人の行動に目を光らせ、ウイルスに怯えながら暮らすようでは、感染のリスクを取り除けないだけでなく、メンタルヘルスの上でも大きなリスクを抱えています。そんなときにはちょっと外に出て、自然に触れて心を落ち着けたり、反対にアクティブに身体を動かしたり、野外でゆったりと過ごすための場所や時間が、これからもっと大事になってくるのではないでしょうか。
 それは、子どもたちの学びにとっても同じであるはずです。今こそ、「学ぶこと」の根源的な意味に立ち返り、子どもたちが安全な場所で「学ぶことが楽しい」と思えるような環境や状況をつくること。そのような可能性が野外のフィールドには溢れているのだと信じて、わたしたちは活動を行なっています。「どういうときに人は学ぶのか」という問いについてあらためて考えてみると、学びは学校の教室の中だけで起こるものでも、教科ごとに分節化して断片的に捉えられるものでもありません。むしろ、現実の体験や日常の生活のあらゆる文脈を通して、あるとき不意に点と点がつながるように、ものごとの意味が自分の中ですとんと腑に落ちるような場面が生まれるのではないでしょうか。そうだとしたら、子どもたちの自然体験や課外学習を週末のレジャーのような「特別な体験」と捉えるのではなく、日常の暮らしの中で身体と五感を働かせ、野外の環境で「遊びながら学ぶ」ことに、学ぶ楽しさや自分の学び方を見つけるヒントが眠っていると思うのです。
 もちろん、あくまでも野外はひとつの方法であり、絶対的な「最適解」ではありません。また、ただ野外に出るだけで、ある程度具体的な目的や、学びにつなげるための方法を持ち合わせていなければ、そのときの体験は「楽しかった」で終わってしまいます。野外の活動が安全で、楽しく、活動的で、創造的で、互いに異なるものどうしが共に学び会える場となるように、野外で算数の活動を知ってくださった皆さんと一緒に作っていければと思います。
 野外のフィールドは空調の効いた室内とは違い、雨も降るし風も吹くし、寒さや暑さも感じる不安定な環境です。ただそのような複雑さや多様さに満ちているからこそ、ときに目を見張るような風景や、神秘的な出会いをわたしたちに届けてくれるものでもあります。自然の中で感じる美しさや安らぎが、単純化できない複雑さや多様さによるものであるとしたら、すべてがデジタルに単純化された世界から離れるオルタナティブな選択肢として、これからの学びと暮らしのあり方を捉え直してみませんか。
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*新型コロナウイルス感染症を受けて
 私たちが実施している講習会やワークショップは、現在はすべてオンラインで行なっています。実際にフィールドに出て活動を紹介できないのは心苦しく、何よりも「体験を通して理解する」ことがこの活動の重要なポイントですが、反対にオンラインにはオンラインでしかできないメリットがあります。全国で「野外で算数」に興味を持っていただいた方や、ときには本国スウェーデンや世界中とつながりなが、野外での学びについて対話を重ねていきたいと思っています。
そのほかにも、地域内で参加者を集め、私たちは講師としてインターネットで解説と指導を行うといった、オンラインとオフラインと組み合わせたワークショップも実施しました。
 それぞれの地域や学校、グループなどで野外で算数を実践される場合は、感染症対策に十分配慮して実施してください。身体的距離(ディスタンス)の確保、マスクの着用、うがい手洗いや手指の消毒から、検温、スタッフ間や参加者とのやりとりと確認、コロナ対策ガイドラインの作成、緊急時の対応などを十分に検討した上で活動を行うようお願いします。また、普段接触する人とそうでない人を意識し(バブル)、外部や遠方から参加者や講師を集める際はより慎重な判断が必要になります。
参考資料(PDFリンク):
⾃然体験活動・⾃然教育・野外教育・環境教育を実施している事業体における新型コロナウイルス対応ガイドライン(第1版)
(公益社団法⼈⽇本環境教育フォーラム、NPO法⼈⾃然体験活動推進協議会、⼀般社団法⼈⽇本アウトドアネットワーク)
イラスト2
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